中沢酒造

神奈川県西部、丹沢山系の麓に位置する足柄上郡松田町に、中沢酒造は蔵を構えている。創業は文政8年、1825年。およそ二百年にわたり、この土地で酒造りを続けてきた老舗酒蔵である。山と町が近く、自然と人の営みが重なり合う環境が、蔵の佇まいにも静かに表れている。

松田町は、丹沢山系を水源とする伏流水に恵まれた地域として知られている。中沢酒造の酒造りも、この水の存在を基盤として成り立っている。硬さを主張しない柔らかな水質は、酒に穏やかな輪郭を与え、過度な装飾を必要としない酒質へとつながっている。

酒造りにおいては、土地の水と米の個性を丁寧に引き出すことを重視し、流行や過剰な演出に寄らない姿勢を貫いている。長年積み重ねてきた技と経験を軸に、安定感のある酒質を守りながら、日常の食卓に寄り添う酒を形にしてきた。

丹沢の空気と水を含んだ酒は、穏やかな香りと滑らかな口当たりを備え、飲み進めるほどに静かな旨みが広がっていく。主張しすぎることなく、しかし確かな存在感を残す余韻。中沢酒造の酒は、この土地の時間と共に育まれてきた、落ち着いた佇まいを映し出している。

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