久米桜酒造
久米桜酒造は、1855年の創業以来、鳥取県西部・伯耆町の地で酒造りを続けてきた酒蔵です。大山の麓に位置する蔵は、長い年月の中で地域と静かに関わりながら歩みを重ねてきました。現在も蔵は地域に開かれ、見学や試飲、直売を通じて、その営みを日常の延長として伝えています。時代が移ろっても、土地とともに酒を醸す姿勢は変わらず受け継がれています。
酒造りの基盤となるのは、大山に連なる山々からもたらされる水と、地元で育まれた酒米です。自然条件に恵まれたこの土地ならではの水と米が、仕込みの一つひとつに用いられています。周囲の環境と無理なく調和した素材選びは、蔵の酒造りを静かに支える要素として位置づけられています。
主な銘柄には「八郷」をはじめ、純米大吟醸や強力、生もとシリーズが並びます。酒造りは伝統的な製法を軸とし、素材の持ち味を丁寧に引き出すことに重きが置かれています。特定の技法を誇示することなく、米と水が本来備える性質に向き合いながら、酒質を整えていく姿勢が一貫しています。
蔵に流れる時間は穏やかで、酒は過度に語らず、ただ土地とともに在ります。杯を傾けると、大山の水脈と伯耆の風景が、静かな余韻として立ち上がってきます。日常の食卓にそっと寄り添いながら、土地の気配を伝える酒。その佇まいに、久米桜酒造の歩みが重なります。