辻本店

辻本店は、岡山県真庭市勝山に蔵を構える酒蔵で、1804年の創業以来、200年以上にわたり酒造りを続けています。公式情報では、酒銘「御前酒」が蔵の代表ブランドであり、地元の米と水を大切にした酒造りを基本とする姿勢が示されています。蔵は長い歴史の中で培われた技術を受け継ぎつつ、現代の設備を適切に取り入れ、地域の酒文化を支える存在として位置づけられています。

勝山は旭川水系に沿った自然豊かな地域で、周辺の山々から流れ込む良質な水に恵まれています。辻本店が使用する仕込み水は軟水で、清らかさと柔らかい口当たりを特徴とし、蔵の酒質を形作る重要な要素となっています。気候は四季の変化がはっきりしており、寒冷な冬の環境は発酵管理に適した条件をもたらしています。

原料には岡山県産の酒造好適米を中心に使用しており、特に「雄町」へのこだわりが公式情報でも強調されています。麹づくりから発酵までの工程では、伝統的な手法に基づいた丁寧な管理が行われ、商品ごとに精米歩合や酵母を使い分けて多様な酒質が設計されています。また、古式の“菩提酛”を用いた仕込みにも取り組んでおり、地域と歴史に根ざした造りが特徴として挙げられます。

味わいとしては、雄町米のふくらみある旨味と柔らかな質感が感じられ、蔵の定番酒では穏やかで食事に寄り添うスタイルが多い印象があります。菩提酛仕込みでは、酸味と奥行きが加わる独自の風味が特徴的で、伝統的手法による個性が表れています。いずれの酒にも、地元の米と水、そして歴史ある技が調和した風格が感じられます。

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